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名探偵の掟 レジュメ

2013/9/12(夏合宿課題作) ふじけむ

作者、東野圭吾について

大阪市生まれ⇒阪南高校⇒大阪府大という大阪人ルートをたどり、高校時代に『ア ンドロイドは警告する』(非公開)を書き上げ、その後大学ではアーチェリー部の主将になり、その後就職し、そのかたわら作家になり、「放課後」が江戸川乱歩賞を受賞した。その後専業作家になり、しばらく鳴かず飛ばずの時期があった後、この「名探偵の掟」がこのミス3位に入賞した。現在日本推理作家協会理事長。

主な登場人物

大河原番三(Oogawara Banzou) テンプレダメ警部役。この話の脇役的主人公。42歳。
天下一大五郎(Tenkaichi Daigoro) よくある感じの名探偵。 神出鬼没、頭脳明晰、博学多才、時々刑事、時々女子大生 年齢不詳

0、プロローグ

警部の苦労がつらつらと書き連ねてありますね。以下 12 章は回想という形式をとってお り、時系列的にはエピローグに繋がる。

1、 密室宣言―トリックの王様

ワンパターンで厚顔無恥な『アレ』(笑) 1,締め方に工夫 2,開け方に工夫 3,結果的に(偶発的に) 4,殺し方に工夫 まあ4がメインですね。1はちょっと古い。 確かに探偵のことを素人呼ばわりするくせにはホイホイ従う警官って多いよね。『未亡人』が犯人である確率は高いね。ここあたりはまだ面白い

2、 意外な犯人―フーダニット

フーダニット (Whodunit = Who (had) done it)誰が犯人なのか。ただ誰が犯人だとしても、文句なしの犯人ってものすごくむずかしい。『美人』でなければ犯人にはなりえないらしい。別に男はそうでもない。「X」とかね

3、 屋敷を孤立させる理由―閉ざされた空間

(そんな橋が一本落ちたくらいで閉じ込められる環境に家建てんなよ、、、建てても電話 線とかライフラインはしっかりしとけよ) まぁ今回みたく屋敷にギミックがある場合は仕方ないけど、ノックスの十戒の3に反しているパターンのやつはどうだろう。「○○館の殺人」とか

4、 最後の一言―ダイイングメッセージ

トンチを考えている余裕あるなら医者を呼ぶ気持ちはよくわかる。正直ダイイングメッ セージってたまにそこまで謎解きに関係なかったりすることって少なくないよね。

5、 アリバイ宣言―時刻表トリック

こんな犯人いねーよ(´д`)怪しすぎるわ、ドラマにする時大変だろうが。私も時刻表見たことありません(´>ω∂`)てへぺろ☆西村京太郎さんごめん

6、『花の OL 湯けむり温泉殺人事件』論―二時間ドラマ

二時間ドラマの推理のチープさはいらだたしいことはこの上ない(´-ω-`)そして誰が 期待するのか無駄なラブロマンス、取って付けたような動機、なぜか出てくる崖。 ただ本作で「子供騙し」呼ばわりされたまんじゅうの糞トリックに似たものが実際にドラマで使われていた。大体 2 時間ドラマ版は糞。

7、切断の理由―バラバラ死体

現実的にはこんな感じにやりたいからやったっていう犯人って多そう。現実的にバラバ ラ遺体は出血がヤバすぎて工夫もなんもできなさそう(画像で見る限り)ミステリで法医 学を持ち込んではダメ(´・ω・`)

8、トリックの正体―???

無理がある。以上。そろそろネタ切れ感が。10年以上前の作品だからアレだけど近年は男女誤認トリックは叙述がメインだね。

9、殺すなら今―童謡殺人

最近は連続殺人にも割といちいち見立てが使われることが多いけど、あんまり理論的 な説明がある場合というのは少ない。どう考えてもリスキー

10、アンフェアの見本―ミステリのルール

まぁいつもと微妙に警部の行動も違うんだけどね。確かに初見でなければこれはつま らない。内容も失速気味

11、禁句―首なし死体

「首がなく、指紋がなくなっている」のがデフォ。御都合主義(;´д`)でもこの理由なら意外と納得できる。

12、凶器の話―殺人手段

凶器の話であるように見せながら実際は「作中で探偵が最終的に提示した解決が、本当に 真の解決かどうか作中では証明できないこと」(後期クイーン的問題)もテーマになっている。

エピローグ

うん、っていう感じ。実際助手ポジションが犯人なシリーズものは日本ではわりとある。 特に叙述もの、最後の選択―名探偵その後 専門家ねぇ、、、ちょっと苦しい。最後の主張もわからなくはない。殺されるはずない、死ぬはずがないってのは明らかなお約束だしねぇ。

この作品について

書かれたのは 1996 年、ジャンルはメタミステリ、東野圭吾は『超・殺人事件 推理小説作家の苦悩』みたく、割と突拍子のない作品も書きます。ドラマ化もされた作品で「東野圭吾は嫌いだけど、これは好き」という人もいたりする。作品内設定は本格の世界観を持つ「天下一大五郎シリーズ」という設定のもの。もちろん、天下一大五郎は今作のためのキャラであり、実際そんなシリーズはまだありません。(厳密には今作のあとに「名探偵の呪縛」を書いており、その主人公が「天下一」であるが、内容的に「呪縛」は続きとは言い難い。)この作品は基本的にギャグで、本来ミステリとは言い難いが、「ミステリを読み慣れているからこそ面白いジョークやテーマで」できているためにこの場でやらしてもらっています。
※一応「名探偵の使命」というシリーズ第3弾を東野圭吾の公式HPで予告していたが、 未だ出ていない。講談社の刊行予定作品一覧にもあったが、何らかの事情で消えている。 メタミステリとしてただこれをメタミステリとして傑作か否かという話になると微妙。ギャグだし。メタミステリの定義は「推理小説の物語構造そのものを題材としたり、登場人物が書く別の推理小説が作中作として使われたりするもの」。広義のアンチミステリに重複することが多いです。
ちゃんとしたメタミステリを読みたい場合は麻耶雄嵩の「夏と冬のソナタ」や竹本健治 の「匣」の中の失楽」がいいのではないでしょうか。

おまけ

おらんとは思うけど一応「ノックスの十戒」を知らない人用に。ノックスは多分冗 談で書いた気がする。ヴァン・ダインの二十則ほどマジに考えなくていい感じ。

1.犯人は物語の当初に登場していなければならない
2.探偵方法に超自然能力を用いてはならない
3.犯行現場に秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない(一つ以上、とするのは誤訳)
4.未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない
5.中国人を登場させてはならない (これは中国人という意味ではなく、言語や文化が余りにも違う他国の人、という意味である)
6.探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない
7.変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない
8.探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはならない
9.“ワトスン役”は自分の判断を全て読者に知らせねばならない
10.双子・一人二役は予め読者に知らされなければならない